こんにちは、FP(ファイナンシャルプランナー)のこよみです。
「年収の壁」の記事に続き、今回はペンと書類を持って格闘するあなたのための**「実務編」**です。
年末調整の時期、私の元に一番多く寄せられる相談。それは… 「住宅ローン控除のハガキが、今年は届かないんですけど…」 「保険料控除の書類、どこに何を書けばいいのか呪文に見える…」
実は2025年(令和7年)の年末調整は、これまで紙で届いていた証明書が**「電子データ」**に切り替わっているケースが急増しており、郵便受けをいくら探しても見つからない…という「ステルス化」が進んでいます。
今回は、住宅ローン控除と保険料控除で**「損をしないための書類集め」と「最短で終わらせる書き方のコツ」**を、FP視点で徹底解説します。

住宅ローン控除のハガキが来ない理由(2025年版)
「毎年10月頃に銀行から来るはずの『年末残高等証明書』が来ない…」 これには、主に3つの理由が考えられます。特に今年は①のケースが急増中です!
① 銀行の「電子交付化」が急増
これが一番多い原因です。 大手銀行やネット銀行を中心に、紙のハガキ郵送を廃止し、**「銀行のマイページ(ウェブサイト)から自分でデータをダウンロードする」**方式に切り替える動きが加速しています。
【対策】 郵便受けを何回見てもありません。銀行のウェブサイト(マイページ)にログインし、「電子交付サービス」や「帳票一覧」を確認してみてください。そこにひっそりとPDFが届いているはずです。
② 「調書方式」で紙の証明書がそもそも発行されない
これは最新のデジタル手続きです。一部の新しい契約(2023年以降の一部など)では、銀行が税務署へ直接データを送る**「調書方式」**が採用されている場合があります。 この場合、そもそも紙の証明書は発行されず、マイナポータルを通じてデータを取得し、会社の年末調整ソフトに連携する必要があります。 「うちは調書方式かな?」と迷ったら、銀行のQ&Aページを確認しましょう。
③ 控除期間の終了・繰り上げ返済で対象外になっている場合
「あれ、10年だっけ?13年だっけ?」 住宅ローン控除には期間があります。期間が終了した翌年からは、当然ながら証明書は届きません。 また、繰り上げ返済をして「返済期間が10年未満」になった場合も、その年から控除の対象外となり、証明書は発行されなくなります。
住宅ローン控除は“省エネ基準”が超重要
これから家を買う人、あるいは2024年・2025年に入居した人には、厳しい現実があります。
適合住宅とその他の住宅の違い
これまでは「新築なら何でも控除OK」でしたが、ルールが厳格化されました。 「省エネ基準適合住宅」や「ZEH水準」などの認定を受けていないと、控除額が減らされたり、最悪の場合は0円になったりします。
2024・2025年入居の注意点(控除0円の人が続出)
2024年以降に入居した場合、以下の条件を満たさないと住宅ローン控除の借入限度額が0円(=控除なし)になってしまうケースがあります。
2024・2025年入居の新築住宅の住宅ローン控除
- 省エネ基準適合住宅など: 控除対象(限度額あり)
- その他の住宅(省エネ基準未達): 原則、控除対象外(0円) ※2023年末までに建築確認を受けている場合などは例外あり。
必要書類(省エネ基準適合証・住宅性能評価書等)
「新築マンションを買ったのに控除が受けられない!」という事態を防ぐため、購入時の契約書類にある**「建設住宅性能評価書」や「省エネ基準適合証」**を必ず確認してください。 これらの書類は、後述する「1年目の確定申告」で必ず使います。
参考リンク:国土交通省|住宅ローン減税
住宅ローン控除は「1年目だけ確定申告」
ここでよくある勘違いが一つ。「私、今年(2025年)入居したんだけど、年末調整でやるの?」 答えはNOです。
2年目以降、年末調整で提出する書類は2つだけ
住宅ローン控除の1年目は、必ず「確定申告(翌年2月〜3月)」で行います。 会社での年末調整ができるのは「2年目以降」の方だけです。提出するのはこの2つ。
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
- 税務署から送られてきている書類です(数年分まとめて届いているはずです)。「令和7年分」と書いてある1枚を使います。
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 銀行から届くハガキ、または銀行サイトからダウンロードしたPDFを印刷したもの。
よくある提出書類の間違いまとめ
- 「連帯債務者」なのに1人分しか出していない
- 夫婦でペアローンを組んでいる場合、それぞれの残高証明書が必要です。
- 「借り換え」前の書類を出してしまう
- 今年借り換えをした場合、新しい銀行の証明書が必要です。古い銀行のものは使えません。
年末調整「保険料控除」の書き方ガイド
次は、細かい文字との戦い「保険料控除」です。迷わず書くための「こよみ式3ステップ」を伝授します。
生命保険・介護医療保険・個人年金の3分類
まず、手元のハガキ(またはデータ)を3つの山に分けます。
- 一般の生命保険(死亡保険など)
- 介護医療保険(入院保険、がん保険など)
- 個人年金保険
新制度/旧制度の違い
次に、それぞれのハガキに**「新」と書いてあるか「旧」**と書いてあるかを見ます。 (※契約日は覚えなくてOK!ハガキの目立つところに必ず書いてあります)
こよみ式3ステップで埋めれば迷わない
- 仕分ける: 「種類(3つ)」×「新・旧」で6パターンのどこに入るか確認。
- 転記する: 申告書の該当するエリアに金額を書き写す。
- 計算する: 用紙の下にある計算式(または会社のソフト)で控除額を出す。
これでパズルは完成です!
FPが教える控除の裏技「支払った人が控除できる」
ここで、多くの人が見落としている**「節税の裏ワザ」**をご紹介します。
名義人と支払者が違う場合の控除の考え方
「妻の名義で契約している保険だけど、保険料は夫の口座から引き落としている」 というケースはありませんか?
家族の保険料控除のルール 生命保険料控除は、「契約者が誰か」ではなく**「誰が保険料を負担したか」**が重要です。 妻名義の保険でも、夫がその保険料を支払っている(夫の口座から引き落とし等)実態があれば、夫の所得から控除を受けることができます。
世帯の税金を最適化するポイント
- 夫の控除枠(最大12万円)が余っている場合
- 妻がパートで年収が低く、妻自身の年末調整で控除を使ってもメリットが薄い場合
夫の方で申告すれば、世帯全体での税金が安くなるかもしれません。一度確認してみてくださいね。
参考リンク:国税庁|妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除
年末調整で失敗しがちなミスBEST5
最後に、提出前の最終チェック!
- 電子証明書のダウンロード忘れ(急増中!) 「ハガキが来ない!」と焦る前に、保険会社や銀行のマイページ・メールを確認。
- 社会保険料控除に「給与天引き分」を書いてしまう ここに書くのは、**「子供の国民年金を親が払った」「転職期間中に自分で国保を払った」**という、会社が知らない支払い分だけです。
- 「新・旧」を逆に書いてしまう 計算式が違うため、控除額が変わってしまいます。ハガキの記載を指差し確認!
- 満期になった保険を翌年も書いてしまう 解約や満期で終了した保険は、当然ながら控除対象外です。
- 介護医療保険を「一般」と混同 「入院保険だから生命保険でしょ?」と思いがちですが、今の制度では**「介護医療保険料」**という独立した枠です。
まとめ|2025年の年末調整は「紙→電子化」が最大の変化点
今年の年末調整実務のポイントは、**「紙からデジタルへの移行」**です。
2025年 年末調整・実務のまとめ
- 住宅ローンのハガキがない → 銀行のマイページ(Web)にログイン!
- 今年入居した人 → 年末調整ではなく「年明けの確定申告」!
- 保険料控除 → 「ハガキを見て、新・旧・種類を仕分ける」パズル!
「ハガキが来ないから今年は申告しなくていいや」と放置するのが一番の損です。 デジタル化の流れに少しだけ乗っかって、賢く、確実に税金を取り戻しましょう! 面倒な書類作成ですが、これを乗り越えれば楽しいクリスマスとお正月が待っています。頑張ってくださいね!
【免責事項】 本記事は、執筆時点(2025年11月)の法令・制度に基づき、一般的な情報の提供を目的としています。 住宅ローン控除の適用要件(省エネ基準等)や年末調整の手続き方法は、金融機関や勤務先のシステムによって異なります。また、家族名義の保険料控除の適用可否等の個別の税務判断については、必ず税理士や最寄りの税務署にご相談ください。
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