こんにちは、金融機関勤務のFP(ファイナンシャルプランナー)・こよみです。
街がクリスマスの灯りできらめく頃、私たち会社員に毎年やってくるイベントといえば――年末調整。
「去年と同じように書けばいいでしょ?」
そう思っている方に、今年は絶対に注意してほしいポイントがあります。
2025年(令和7年)の税制改正で、長年有名だった**“103万円の壁”が完全に崩壊**しました。
さらに、扶養に入る対象によって壁の高さが変わる新制度にバージョンアップしています。
- 配偶者(パート):123万円までOK
- 大学生(19〜23歳未満):150万円までOK
今年からは「去年と同じ感覚」で書いたり働いたりすると、
「本当は働けたのにセーブしてしまった」「控除を満額受けられなかった」「書類の記入を間違えて翌年に修正…」など、思わぬ損をする可能性があります。
この記事では、FPとしての知識と最新制度をもとに、2025年からの**“新しい扶養の壁”**と、扶養控除等申告書の書き方を最速で理解できるガイドをお届けします。

1|2025年「103万円の壁」は2つの壁に分かれます
まず最初に結論です。
2025年から、扶養に入れるかどうかの基準は「誰を扶養するか」で変わります。
2025年からの新しい「扶養の壁」
- 配偶者(妻・夫) → 年収 123万円 までOK
- 大学生(19〜23歳) → 年収 150万円 までOK
これが今年最大のポイントです。
そもそも「103万円」はどう決まっていた?
旧制度の103万円は、次の2つの控除の合計でした。
- 基礎控除:48万円
- 給与所得控除:55万円
- 合計:103万円
2025年の改正では、これらがそれぞれ10万円ずつ引き上げられ(学生はさらに特例が加わり)、結果的に“壁”が大幅に後ろへ下がりました。
参考リンク:国税庁|基礎控除の見直し等について
2|配偶者は「123万円まで」扶養OKに|ただし社会保険の壁は別物!
【結論】パート配偶者の税金上の壁は123万円
計算式はこのようになります。
$$\text{基礎控除58万円} + \text{給与所得控除65万円} = \mathbf{123万円}$$
年収123万円以下であれば、所得税法上の扶養親族等の要件(合計所得金額58万円以下)を満たし、配偶者控除(最大38万円)などが適用される基準となります。
月収10万円ちょっと(週3〜4のパート)でも、税金の扶養範囲に収まるケースが多くなります。
【重要】“税金の壁”と“社会保険の壁”はまったく別!
ここを混同する人が本当に多いので、FPとして強く強く伝えたいポイントです。
パート主婦・主夫が意識すべき「3つの壁」
- 税金の壁(123万円): ここまでなら所得税の扶養控除対象。
- 社会保険の壁(106万円): 従業員51人以上の企業などで働く場合、加入義務が発生。
- 社会保険の壁(130万円): 企業の規模に関わらず、扶養から外れて自分で保険に入る基準。
◎よくある失敗
「123万円まで税金がかからないから大丈夫」と思って働いたら、106万円を超えて社会保険料(給与の約15%)が引かれ、手取りが減ってしまった… というケースです。
いわゆる“働き損”になる危険がありますので、必ずご自身の勤務先の条件(従業員数や労働時間)を確認してください。
参考リンク:厚生労働省|年収の壁・支援強化パッケージ
3|大学生のバイトは「150万円まで」控除が満額|新制度の最重要ポイント
2025年の改正で、最も恩恵が大きいのは 19〜23歳未満(大学生年代) の子どもを扶養している家庭です。
旧制度の“魔の崖”は完全に消滅
これまでの制度では、「年収103万円を1円でも超えると、親の特定扶養控除(63万円)がゼロになり、親の税金が激増する」という“魔の103万円の崖”がありました。
親子でバイト調整の喧嘩…よく聞きましたよね。
新制度「特定親族特別控除」=150万円まで満額OK
2025年の新制度では、以下のように変更されます。
19歳〜23歳未満の特定親族(学生など)の控除額
- 年収 〜150万円: 親の控除額 63万円(満額維持!)
- 年収 150万円超 〜: 控除額が徐々に減る(スライド制)
| 子の年収(バイト代) | 親が受けられる控除額 |
| 〜103万円 | 63万円(満額) |
| 103〜123万円 | 63万円(満額) |
| 123〜150万円 | 63万円(満額)←ここが拡大! |
| 150〜155万円 | 61万円(少し減る) |
150万円を超えても一気にゼロにはならず、滑らかに減っていく仕組みに変わりました。働きすぎても突然大損することはありません。
【FP耳より情報】2025年10月〜学生の社会保険の壁も150万円へ
さらに朗報です。2025年10月からは、学生(19歳〜23歳)に限り、社会保険の扶養基準も150万円へ引き上げられる予定です。
- 税金の壁 → 150万円
- 社会保険の壁 → 150万円(2025年10月〜)
学生さんは「とにかく150万円」という分かりやすい基準になります。
※ただし10月施行のため、年の前半で稼ぎすぎないよう注意が必要です。
参考リンク:日本年金機構|令和7年10月からの被扶養者認定要件の変更
4|2025年版・扶養控除等申告書の書き方が大きく変わります
制度が変われば、書類も変わります。
特に大学生のお子さんがいる家庭は要注意です。
①「特定親族特別控除」の新しい欄が追加
2025年の申告書には、**新設の「特定親族特別控除」**を記入する欄が登場します。
19〜23歳未満のお子さんがいる場合は、従来の欄ではなく、この新しい欄に記入する必要があります。
② 子どもの“年収見込み”は必ず確認
新制度では“収入に応じて親の控除額が変化”するため、「だいたい103万円以下だから大丈夫」という書き方はもう通用しません。
特に年収が150万円を超えそうな場合は、正確な金額を書かないと年末調整の計算が狂ってしまいます。必ずお子さんに確認しましょう。
③ チェック欄のミスは本当に多い!
旧制度の「特定扶養親族」と、新制度の「特定親族特別控除」は別枠です。
「去年と同じ場所にチェック」
これは今年、もっとも危険なミスです。必ず会社が配る記入例(マニュアル)を確認してください。
参考リンク:国税庁|令和7年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
5|まとめ|2025年は“壁”が動きまくった年。知らないと損するレベルです
最後に、2025年の重要ポイントを整理します。
2025年 年末調整の変更点まとめ
- 【配偶者】 税金の壁は 123万円 に拡大(社会保険の壁は106万/130万のまま!)
- 【大学生】 親の控除は 150万円 まで満額(社会保険も10月から150万へ!)
制度改革が大幅に行われた今年は、「前年と同じでいいや」では確実に損してしまいます。
年末調整は、1年に一度の“家計の健康診断”。正しい知識で、もらえる控除もしっかり受けましょう。
予告:次の記事はこれ!
「住宅ローン控除のハガキが来ない!」「保険料控除の計算が面倒くさい!」
そんな声にお応えして、次回は**『【年末調整・実務編】住宅ローン控除&保険料控除の完全攻略ガイド』**をお届けします。実務部分はこちらの方が質問が多いので、しっかり整理しますね。お楽しみに!
【免責事項】
本記事は、執筆時点(2025年11月)の法令・制度に基づき、一般的な情報の提供を目的としています。
「103万円→123万円・150万円」等の変更は税制上の扶養基準です。社会保険の加入基準については、学生等の特定年齢層は2025年10月から変更予定ですが、一般の配偶者等は従来の基準(106万円・130万円)が適用されます。個別の税額計算や具体的な申告内容の判断については、必ず税理士や最寄りの税務署にご相談ください。
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