「うっかりしていて、お歳暮を贈る時期を過ぎてしまった!」「年末は忙しくて、気づけばもう年が明けている…」
年末の慌ただしさの中で、そんな経験はありませんか?焦る気持ち、そして「今から贈るのは失礼かな…」と不安になる気持ち、よく分かります。
こんにちは、「こよみ暮らし」の、こよみです。慌ただしい毎日の中で生まれる暮らしの小さな疑問を、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。
でも、ご安心ください。たとえお歳暮の時期を逃してしまっても、時期に合わせて贈り物の名前とマナーを変えれば、失礼なく、そしてスマートに感謝の気持ちを伝えることができます。
この記事では、「お歳暮が遅れてしまった!」という時のために、ケース別の対処法を、それぞれの言葉の由来や背景まで含めて徹底解説します。この記事を読み終える頃には、あなたの不安は解消され、自信を持って大切な方へ贈り物を届けられるはずですよ。

基本ルールは「時期に合わせて表書きを変える」こと
まず、一番大切な結論からお伝えします。お歳暮が遅れてしまった場合の基本ルールは、**「品物を贈る時期に合わせて、のし紙の表書きを変える」**ということです。
具体的には、以下の3つのタイミングで名前が変わります。
- 年内に贈る場合 → 「御歳暮」または「御挨拶」
- 年が明けて「松の内」までに贈る場合 → 「御年賀(おねんが)」
- 「松の内」も過ぎてしまった場合 → 「寒中御見舞(かんちゅうおみまい)」
「なんだか難そそう…」と感じるかもしれませんが、一つひとつの意味と期間を理解すれば大丈夫。それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
ケース1:年内に贈る場合(~12月31日)
お歳暮の正式な期間は12月20日頃までとされていますが、少し過ぎてしまっても、年内に相手に届くのであれば、基本的には表書きを「御歳暮」のままで贈っても問題ありません。
年末は誰しもが忙しい時期ですし、配送が混み合うこともあります。31日の大晦日までに届けば、一年間の感謝を伝える「御歳暮」として受け取ってもらえるでしょう。
「御挨拶」という選択肢も
もし、25日を過ぎてしまい、年の瀬も押し迫ったタイミングで贈るのが気になる場合は、表書きを**「御挨拶」**としても良いでしょう。これなら、年末のご挨拶という少し広い意味合いになり、より丁寧な印象を与えることができます。
ケース2:年が明けてから「松の内」までに贈る場合
年を越してしまった場合は、贈り物の意味合いが「一年間の感謝」から「新年のご挨拶」へと変わります。そのため、表書きは**「御年賀(おねんが)」**として贈りましょう。
最重要ポイント「松の内」とはいつまで?
ここで最も重要なのが、「御年賀」として贈ることができる期間**「松の内(まつのうち)」**です。
松の内とは、門松などのお正月飾りを飾っておく期間のことで、年神様(新年の神様)が家に滞在している期間とされています。この期間は、地域によって異なるため注意が必要です。
- 関東地方:1月7日まで
- 関西地方:1月15日まで
なぜ期間が違うのかというと、江戸時代に徳川幕府が「正月飾りは1月7日まで」というお触れを出したことで、関東を中心にその習慣が広まったためと言われています。東北や九州は関東式、四国は関西式が多いようです。
もし相手の住んでいる地域が分からない場合は、全国的に共通する1月7日までに届くように手配するのが最も無難で安心です。
【こよみの豆知識】「御年賀」と「お年玉」の違いって?
新年によく聞くこの二つの言葉、実はルーツは同じです。どちらも、年神様へのお供え物が元になっています。
昔は、年神様にお供えしたお餅には神様の魂(御魂)が宿ると考えられていました。この魂が宿ったお餅を「御年魂(おとしだま)」と呼び、家長が家族に分け与えることで、一年を無事に過ごす力をいただく、というのが「お年玉」の始まりです。
一方、「御年賀」は、新年の挨拶回りの際に持参した手土産が由来です。
現代では、「お年玉」は主に目下の人、特に子どもに渡す金品を指し、「御年賀」は新年の挨拶に持参する品物全般を指す、と使い分けられています。
「御年賀」の品物選びとメッセージ
「御年賀」として贈る品物は、お歳暮と同様のもので問題ありませんが、新年を祝う気持ちを込めて、少し華やかなパッケージのお菓子や、家族が集まる時期に楽しめるジュースやお酒なども喜ばれます。
品物にメッセージを添える場合は、新年のご挨拶と、年末に挨拶ができなかったお詫びを軽く添えると、より気持ちが伝わります。
【メッセージ文例】
新年おめでとうございます。 年末は何かと立て込んでおり、ご挨拶が遅れてしまい大変失礼いたしました。 ささやかではございますが、日頃の感謝の気持ちです。皆様で召し上がってください。 本年も変わらぬお付き合いをいただけますようお願い申し上げます。
ケース3:松の内も過ぎてしまった場合
「松の内も過ぎてしまった…もうダメだ…」と諦めるのはまだ早いです!最後の方法として**「寒中御見舞(かんちゅうおみまい)」**があります。
「寒中」とはいつ?二十四節気との関係
「寒中」とは、日本の季節の移ろいを表す**「二十四節気(にじゅうしせっき)」に基づいています。「寒中」は、「小寒(しょうかん)」と「大寒(だいかん)」**にあたる期間を指し、「寒の入り」から「寒の明け」までの約30日間、一年で最も寒い時期のことです。
- 小寒(1月5日頃): 寒の入り。寒さが厳しくなり始める頃。
- 大寒(1月20日頃): 一年で最も寒さが厳しい頃。
この厳しい寒さの最中に、相手の健康を気遣うご挨拶として贈るのが「寒中御見舞」なのです。
贈る期間はいつからいつまで?
「寒中御見舞」として贈る期間は、松の内が明けた翌日から、立春(りっしゅん、2月4日頃)の前日までです。
- 関東の場合:1月8日頃 ~ 2月3日頃
- 関西の場合:1月16日頃 ~ 2月3日頃
立春を過ぎると暦の上では春になるため、それまでに届くように手配しましょう。
目上の方へは「寒中御伺」
もし贈る相手が会社の上司や恩師など目上の方の場合は、敬意を示すために表書きを**「寒中御伺(かんちゅうおうかがい)」**とすると、より丁寧な印象になります。「見舞う」ではなく「お伺いする」という謙譲の表現ですね。
【重要】喪中の相手にも使える「寒中御見舞」
この「寒中御見舞」は、自分や相手が喪中の場合にも使えるという、非常に重要な役割があります。
お歳暮は問題ありませんが、お年賀は新年を”祝う”贈り物なので、喪中の際には避けるべきです。そのような場合は、あえて時期をずらして「寒中御見舞」として贈るのが、相手への深い配慮を示すことになります。
特に、ご不幸から日が浅い**「忌中(きちゅう)」(仏式では四十九日間)**の間は、ご遺族も心身ともに大変な時期ですので、贈り物は避けるのがマナーです。忌明けを待つとお歳暮の時期を過ぎてしまう場合は、松の内が明けてから「寒中御見舞」として贈りましょう。
その際ののし紙は、紅白の水引がない無地の奉書紙や白い短冊を使います。
「寒中御見舞」の品物選びとメッセージ
品物は、厳しい寒さの中で心も体も温まるようなものが喜ばれます。例えば、温かいスープのセット、ホットドリンクの詰め合わせ、家族で楽しめるお鍋のセット、上質な素材のブランケットやタオルなども良いでしょう。
メッセージには、厳しい寒さの中で相手の健康を気遣う言葉を添えましょう。
【メッセージ文例】
寒さ厳しき折、いかがお過ごしでしょうか。 年末のご挨拶が遅れてしまい、大変失礼いたしました。 寒さも本番となりますので、皆様どうぞご自愛ください。 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
まとめ:焦らず、時期に合った正しいマナーで感謝を伝えましょう
今回は、お歳暮を贈りそびれてしまった時の対処法について、詳しく解説しました。最後にポイントを整理しておきましょう。
- 年内(~12月31日)なら…
- 表書きは**「御歳暮」または「御挨拶」**でOK。
- 年明け~松の内(関東は1/7、関西は1/15まで)なら…
- 表書きは**「御年賀」**として、新年のご挨拶に切り替える。
- 松の内明け~立春(2月3日頃)までなら…
- 表書きは**「寒中御見舞」(目上の方へは「寒中御伺」**)として、健康を気遣う贈り物にする。
大切なのは、「時期が過ぎたから」と諦めてしまうのではなく、形を変えてでも感謝の気持ちを伝えようとするその心遣いです。
日本の贈り物の文化は、相手を思いやる気持ちから生まれた、とてもデリケートで温かいものです。この記事が、あなたの「ありがとう」をスマートに伝えるための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
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